統計・法律から読み解く日本社会

経済・法律の視点から、家計や労働など日々の生活に関する事柄について分析・提言するブログです

長時間労働の是正はいつ行われるのか~残業はどう変わるか?~

 

近頃、長時間労働が問題となり、長時間労働の是正策が政府で検討されています。ここでは、政府は労働法制をどのように変えようとしているのか解説します。

労働法制見直し

電通の高橋まつりさんの自殺などを発端に、長時間労働に関する問題について、労働法制の見直しに向けた世論が急速に高まっています。

労働時間に関して規定している法律は、労働基準法です。労働基準法は昭和22年(1947年)に制定されており、使用者と労働組合で協定を交わせばいくらでも残業できる、いわゆる「さぶろく協定」はこのときにできました。

当時は、戦時復興の中、国民みなで働き、日本経済を復興させなければなりませんでしたから、長時間労働は仕方がない面もあったかもしれません。しかしながら、現代の社会には、制定当初からあるこれらの規定は明らかに実態にそぐわなくなっています。

戦後の労働時間の在り方が変わる、今、労働者の働き方が大きく変わろうとしています。

現在の労働時間の規制

現在、労働基準法上、労働者の労働時間はどのように定められているのかをみてみます。

労働時間に関する規制(労基法32条

 そもそも労働時間に関する大原則は労基法32条に規定されています。

 

(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

このように労働基準法上は、原則週40時間を超えた労働を禁止させているわけです。

 

例外規定(労基法第36条)

しかしながら、この特例として、労働基準法第36条、いわゆる「さぶろく協定」と言われる条項が規定されています。

 

(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらずその協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

このように、使用者と労働組合が書面で協定をかわし、届け出れば、いくらでも労働させることができることになっています。この規定によって第32条の規制が有名無実化しているわけです。

どう変わるのか?

労働基準法改正の目玉は、残業時間の上限規制の導入です。現在、協定を結ぶことで青天井になっている労働時間に上限規制を導入できれば、労働基準法制定以来の、画期的な大改正になる可能性があります。

問題としては、①残業時間の上限が何時間となるのかということや、②定期用除外となる職種がどのような職種となるのか、などがあります。前者に関しては、現在政府は残業時間月60時間をめどに考えているようで、繁忙期には100時間までの残業時間を認める方針のようです。後者に関しては、研究者やディーラーなど専門職が外されることが見込まれています。

残業規制はいつ導入されるのか?~民進党の歩み寄りが重要~

 

今後のスケジュールは、早くて2017年秋の臨時国会で法案を提出し、成立させたいと考えているようです。臨時国会が厳しければ、2018年1月から始まる通常国会となるでしょう。その場合、予算関連法案ではなさそうなので、4~6月頃の成立となるかもしれません。

民進党など野党は残業時間の上限規制とともに導入される脱時間給制度へ反対するという名目で、与党と対決方針をとっています野党である民進党は連合が支持基盤であり、本来、労働者の味方である政党なんですから、労働者の利益を考えて成立に向けて尽力をしてほしいですね。