統計・法律から読み解く日本社会

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豊洲など湾岸エリアのマンション価格はどうなるか?ーマンション価格が暴落する必然性はないー

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豊洲エリアにおいてマンションが林立しており、将来マンション価格がどう変動するかが注目されています。

いくつかの媒体にはオリンピック後に価格が急落するという観測もある中、価格の見通しはどうなるのでしょうか?。今回は、近年の動向をまず確認してみましょう。

 

豊洲のマンション価格の現状

過去、分譲された大型マンションの価格推移をみることで、豊洲のマンション価格の動向を探ります。

 

1.アーバンドックパークシティ豊洲

 ―石川島播磨重工業(現・IHI)造船所の跡地約50haで実施された大規模な再開発の一環で、晴海運河に面した7街区アーバンドックの住宅施設であり、同街区の商業施設ららぽーと豊洲とは地下で連絡している。
 

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■価格推移(水色:平米当たりの該当物件の相場、黒実践:東京都の相場、黒点線:江東区の相場)

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2.ザ豊洲タワー

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■価格推移(水色:平米当たりの該当物件の相場、黒実践:東京都の相場、黒点線:江東区の相場)

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3.シティタワーズ豊洲ザツイン

豊洲2・3丁目再開発の一環で建設された。9-2街区のS棟とN棟の2棟からなる『ザ・ツイン』と、江東区豊洲北小学校を挟んで北側に離れたの8-4街区の『ザ・シンボル』という、合計3棟の超高層マンションによって構成されている。総戸数は『ザ・ツイン』が1,063戸(ザ・ツイン)、『ザ・シンボル』が全850戸で、日本では戸数が第3位の大規模マンション

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■価格推移(水色:平米当たりの該当物件の相場、黒実践:東京都の相場、黒点線:江東区の相場)

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豊洲マンションの価格の動向

これらをみると、リーマンショック後の最近5年間はやはり値段が上がっていることがわかります。

当然、中古物件であるため、経年劣化による資産価値の劣化も同時並行で進行しており、最近5年間の価格推移は極めて良好であったといえるでしょう。

 

価格が暴落する根拠はあるか?

一方、豊洲など湾岸エリアのマンション価格が暴落するという話しは尽きません。代表的な理由としては、

①過去、価格が上がりすぎた。そのため、近いうちに価格は低下する

②子育て世帯など若い世帯がたくさん住んでいるおり、将来は多摩ニュータウンのように高齢者ばかりになる

③日本の人口はこれから減少するため、需要が減少し価格は低下を続ける

というようなものがあるでしょう。

しかし、これらの懸念が現実となる可能性はいずれもそう高くないと思われます。

 

1.過去、価格が上がりすぎた。そのため、近いうちに価格は低下する

そもそも湾岸エリアの住宅価格の決定メカニズムはそのほかの地域のそれとは大きく異なっています。

通常の地域であれば、供給する土地に限りがありますから、既存の住宅の統廃合などによって新しい住宅が供給されます。このため、価格の大きな変動があったとすれば、それは一過性のものでいずれは長期的な水準に調整するでしょう。

ただし、湾岸エリアは違います。もともとは空地やあっても倉庫などばかりだった土地が開発され、空地に住宅が作られ、土地の性質が大きく変化しています。このような地域の住宅価格の高騰は、短期的な変動というようりも、魅力的な土地に生まれ変わることによる長期的な価格のトレンドの上昇という側面が強いでしょう。(ただし、トレンドとしての上昇以上に高騰している可能性があるため、そこは注意深く観察する必要があります)

 

2.子育て世帯など若い世帯がたくさん住んでいるおり、将来は多摩ニュータウンのように高齢者ばかりになる。

これも、やや苦しい理屈づけでしょう。多摩ニュータウンなど過去1970年代~1980年代頃に大量供給された住宅は郊外が中心です。これらの町は、人口が急激に増加する中で、政府が住宅供給を拡大する必要性に迫られたことから、大量に住宅が供給される過程で生まれています。

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一方、湾岸エリアは、タワーマンションからみる絶景、銀座など都心に徒歩を含めて10数分程度でのアクセス、といった優位性があります。都心へのアクセスは特に若者や若年夫婦が求めるサービスであるため、よっぽどのことがない限り、郊外の都市のように若者の流入が途絶え、寂れる可能性はないでしょう。

ただ、豊洲など湾岸エリアの現在の人口構成がいびつであることは事実だと思います。子供の数は近々ピークで高年齢者の人口シェアが増加していくでしょうから、保育園や小学校のつくりすぎなど一時的な人口の偏りがもたらす悪影響には留意する必要があります。

 

3.日本の人口はこれから減少し始めるため、需要が減少し価格は低下を続ける

湾岸エリアに限らず、住宅価格が暴落するという理由に真っ先に挙げられるのが、人口減少です。

ただし、人口減少もマクロでみれば正当性はありますが、各地域すべてに当てはまるかというとそうではありません

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上の図は東京都が予測している将来人口の推移ですが、御覧のとおり人口のピークは2025年と先であり、かつ今後50年くらいは減少ペースも非常に緩やかです。

地方での住宅価格低下はまぬかれないと思われますが、人口減少が要因となり都心の住宅価格が下がるかというとかなり怪しいとみておいた方がよいでしょう。

 

ほかにも、いくつか言われていることがありますが、湾岸エリアの価格が暴落するという根拠はそう信頼性が高いものではなく、湾岸エリアの価格が低下する必然性はないといえるでしょう。

 

実需で湾岸エリアのマンションを考えるのであれば「有り」

今後の湾岸エリアのマンションがどう変動するのかを決めるのは、結局のところ、需要と供給の関係なわけです。湾岸エリアのマンションの価格が下がるというのは、変えない人の嫉妬であるとか、希望的観測が入り混じった感情的な側面が強く、住宅が供給される以上にたくさんの人が湾岸エリアのマンションをほしいと思ってくれるかが重要です。

豊洲などはもう空地はほとんどなく、供給できる土地は限られていますから、限られた新築マンションと多くの中古マンションが流通するという、ほかの地域と同一の市場に収斂していくでしょう。

そこでは、ほかの地域と同様にどれだけその地域が便利でブランドがあって、住みたいと思うかで住宅価格が決められていきます。港区のように、都心からのアクセスが良好で、多くの人が住みたいと思える街になれば、価格はさらに上昇するでしょうし、23区東部のようにブランドの構築に遅れ、所得が高い層があまり住みたいと思わないことで価格が低位で推移する可能性もあります。

もっとも、ここまで湾岸エリアの住宅価格暴落には根拠がないと言ってきましたが、私は短期的には住宅価格は調整される(低下する)と思います。現在は復興需要や東京五輪の需要による労務費の上昇や、円安による資材の高騰などから、住宅市場はやや過熱しているからです。

短期的には低下するリスクは比較的高いのではないかと思いますが、タワーマンションから見る眺望や都心へのアクセスは魅力的であり、それでも実需で湾岸エリアのマンション買うのであれば、それは十分「有り」だといえるのではないでしょうか。